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井笠客車の調査進む その6 [活動報告]

前回に続き、床下の調査です。

床下の車端部には軽便鉄道車両らしくピンリンク式の朝顔型連結器が取り付けられています。
ただし、どうも井笠鉄道から西武山口線に移籍した際に、連結器の高さが下げられていたようで、本元の高さと思われるフレームには穴を埋めた跡が残されています。
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連結器と、改造跡が残る車端部

床下側から見てみると、もともとのフレームから吊り下げられるように、連結器の取付座が増設されていることがわかります。これもまた西武所沢工場の改造と思われますが、アングル鋼材等を組み合わせたしっかりした構造になっています。
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改造された連結器取付座

そして最後に屋根です。
明治大正期の客車らしく、“ダブルルーフ”と呼ばれる二重屋根となっています。竣工図面や現役時代の写真等を見てみると、井笠鉄道時代に一度大きな改修が行われたようです。しかし、今は屋根の全面に防水シートが張られています。そのシートの形状や車両の来歴から想像すると、おそらく電車の屋根用の防水シートと思われます。この防水シートが長年にわたり風雨から車両を守ってきました。一部は劣化し剥がれて内部構造が露出している部分もありますが、外見からするとおおむね健全な状態を保っていますし、室内から見ても目立った雨漏り跡もありません。
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屋根の一部は防水シートが剥がれてしまっている

また、ダブルルーフの段差部分には片側に2個づつ水雷型ベンチレーター(換気装置)が備え付けられています。
このベンチレーターはベンチュリ効果を利用して走行風のみで室内の空気を車外に吸い出し、換気を行うことができます。モーターやファンなど動力は一切使いませんので、明治・大正期の鉄道車両には多用されていたようですが、今やすっかり見かけることはありません。
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水雷型ベンチレーター

室内側には回転式のふたがあり、このふたを調節することにより吸い出し量が調節できます。しかし、現在は塗料が回ってしまっていて開閉はできない状況です。
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ベンチレーターの室内側

今後の保存にあたって、雨漏りは木造客車の大敵ですので、屋根周りはポイントの一つとなります。防水シートの下、屋根本体の構造体の傷み具合が問題になってくると思われますが、防水シートを剥がしたら一体どうなっているのか、期待半分、恐怖半分といったところです。しかし、迂闊に剥がして逆に雨露を浸み込ませては元も子もありませんので、この辺は専門家のお知恵も借りつつの対応が必要になってくるものと思われます。

以上、 6回にわたって調査の状況をお伝えしてきました。これらの調査は現在もまだ続行中です。その結果を踏まえ、作業工数や費用も考慮した上で、今後の方針を検討していくことにしています。
タグ:井笠客車
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