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井笠鉄道記念館で客車の調査を行いました [トピックス]

去る9月23日、羅須地人鉄道協会のT代表幹事が岡山県の井笠鉄道記念館に訪問し、客車レストアのための調査を行ってきました。
井笠鉄道記念館は、1981年に開設された井笠鉄道の鉄道保存展示施設で、井笠鉄道の新山駅の跡地にあります。井笠鉄道といえば、まきば線にやってきた木造客車の故郷でもあり、この記念館には同型のホハ1が保存されています。

もと新山駅長でもある同記念館の田中館長は、昭和3年のお生まれと御高齢でしたが、多少お耳が遠いもののとてもお元気でした。訪問の目的を告げると大歓迎していただき、持参したまきば線への客車搬入時の写真をお見せすると、大変興味深げに繰り返しご覧になっていました。
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井笠鉄道記念館と田中館長
 
そして、本来の目的である保存車両のホハ1もじっくりと拝見させていただきました。
まきば線にやってきた旧ホハ2・旧ホハ5はこのホハ1と同時に製造された同型車ですが、井笠鉄道廃止後、西武鉄道山口線への入線時とレストランに改装される際にいろいろと改造を受けています。一方、このホハ1は井笠鉄道廃止以降も、当地で保管されていましたので、井笠鉄道廃止時の姿を今に伝える貴重な個体となっています。
蒸気機関車の1号機と貨車のホワフ1に挟まれ保存されているホハ1は、ペンキは多少剥げているものの、屋根の下の保管ということもあり、まきば線に搬入された車両と比べても木部の腐敗は進んでおらず、大変よい状態を保っていました。
この車両を拝見することにより、まきば線の客車では撤去されてしまった座席や鎧戸・吊革・網棚のみならず、床下のかさ上げ状況や屋根の材質など、いろいろと謎だった部分についてもオリジナルの状況を確認することができました。
ただし、座席の下を覗き込んだり床下にもぐったりと、客観的にはかなり怪しげな行動となりましたが…。
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まきば線の客車からは失われてしまった座席・鎧戸・吊革・網棚の残る車内

この調査により、この客車についていろいろな事がわかってまいりました。まきば線での客車修復作業についても弾みがつくものと期待されます。
タグ:井笠客車

今週末の軽便鉄道模型祭に『南軽出版局』が出店いたします [トピックス]

今週末の10月2日に目黒さつき会館で「第7回軽便鉄道模型祭」が開催されます。
この催しは、軽便鉄道の模型愛好家の皆さんが中心となって開催されているお祭りで、今回で7回目となります。
前回の第6回軽便鉄道模型祭では、羅須地人鉄道協会の創設にも大きくかかわったけむりプロの皆さんにより、プレイベントとして『軽便讃歌~けむりプロの世界』が開催され、大好評を博しました。

今回の第7回軽便鉄道模型祭でも、 『軽便讃歌2』と題した下記の講演が予定されています。
 ・梅村正明氏 『私の見た頸城鉄道など、1965年頃』
 ・今井啓輔氏 『知られざる森林鉄道と簡易軌道』
 ・杉 行夫氏 『泥んこの基隆炭鉱鉄道、そして羅須へ』

いづれの講演とも、普段聞くことができない貴重なお話になりそうなうえに、3つ目の講演は、当会の杉会長の講演でもあります。タイトルに『羅須』が入っていることからも、当会創成期の貴重な話がお聞きできそうです。

そして、今回は講演のほかにも、けむりプロの下島さん、杉さん、井上さんや、そのフォロワーの方々が中心となり、『南軽出版局』を設立、出版物他の頒布を行うこととなりました。

主な頒布物としては、
 ・書籍『2010 軽便鉄道模型祭プレイベント記録 軽便讃歌~けむりプロの世界~』
 ・南部軽便鉄道図面集
 ・遠山森林鉄道イラストマップ
 ・当日講演者の著書サイン本
 ・井笠客車腰板 ほか
などを予定しているそうです。
このうち、「井笠客車腰板」というのは、まきば線でレストア中のホハ5の腰板のうち、再生不能なものを、加工したものです。
記念品としてだけでなく、ホハ5の歴代の塗膜が残っており、色見本(?)としてもご活用いただけます。

また、この南軽出版局さんからは、今回の収益金から客車レストア資金のご寄付のお申し出もいただいております。
第7回軽便鉄道模型祭にお越しの際にはぜひお立ち寄りください。

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杉さん・井上さん自ら工具を手に“井笠客車腰板”製造の図

タグ:南軽出版局

井笠客車から“お宝”! 後編 [トピックス]

さて、前回は西武園ゆうえんちのレストランポッポ時代の“お宝”でしたが、今回の“お宝”はさらに時代をさかのぼり、西武鉄道山口線、そして井笠鉄道時代の“お宝”です。
西武山口線時代の“お宝”、レストア作業のため内張りを剥がしたところから出てきました。
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内張りの中から出てきた“お宝”

出てきたのは“遊園地前→ユネスコ村”の“おとぎ線乗車券”です。
、「発売当日限り有効 200円」の表示がある硬券の切符です。一部に剥がれや汚れがありますが、“57,11,-3”の日付印もしっかりと判読できます。この乗車券が発見された場所から想像すると、おそらく乗客の一人が窓枠と窓袋の隙間に誤って落としてしまったものと思われます。
乗車券の日付は文化の日です。この切符の持ち主は祝日を利用しておとぎ列車に乗ったものの、切符を紛失してしまい冷や汗をかいたことでしょう。もちろん遊園地前は有人駅で切符がないことには乗車できませんし、途中駅があるわけでもないので、ユネスコ村駅できちんと申告し、事なきを得たものと思われます。
しかし、落とした場所が良かった(悪かった?)のか、その後、この車両がレストランに改造された際も発見されず、そのまま29年の時を超え、ようやく今回改めて日の目を見ることとなりました。
この車両が西武山口線で活躍していたことを物語る貴重な資料です。

続いての“お宝”は、さらに時代をさかのぼります。
塗料で厚く塗り込められたフレームに取り付けられていた“銘板”です。
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フレームから“発見”された銘板
左は塗膜剥離前、右は剥離後

元からフレームに取り付けられており、改めて“発見”されたわけではありませんが、長い年月にわたり厚く塗料が塗られていたこともあり、そのままでは銘板の文字すら判読ができないほどでした。しかし、その厚い塗膜をていねいに剥がすと、大正2年の新製時そのままの、鋳物製の鈍い輝きを放ちはじめたのでした。塗膜で潰れていた「社會輛車本日 年二正大」の文字や日本車輛のマークの陽刻も、まるで新品のようにはっきりと確認できます。
この銘板は、車両の素性を証明する貴重な銘板ですので、レストア完了と共にまたフレームに取り付けられる予定です。

そして、最期の“お宝”、これはフレームそのものに残されていました。
フレームの塗装を剥離したところにうっすらと文字が浮かび上がってきました。
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画像では見にくいものの、塗装を剥離したフレームに文字が

フレームに浮かび上がった文字は「社會式株道鐵便軽岡笠原井」、そう、井笠鉄道の開業時の会社名が右から書かれていまず。大正4年には「井笠鉄道株式会社」に社名変更しており、明治44年の設立時から4年間のみの社名です。この社名がフレームの鋼材に手書きで書かれていたのでした。
この車両が製造された大正2年は、その3年前に施行された軽便鉄道法のおかげで、日本全国で軽便鉄道の建設ラッシュに沸いていました。おそらく、この車両が製造された日本車輛製造株式会社の工場でも各地の軽便鉄道からの注文が殺到し、多数の木造軽便客車を製造していたことと思われます。他社線の車両と混同することがないよう、そのフレームに注文主である井笠鉄道の社名を書き込んだのでしょう。
さすがに塗膜を剥がしたそのままの状態にはできませんので、記録として撮影した後に、その上からあらためて防錆塗装を行いました。そのため今はもう見ることはできませんが、いつの日かまたフルレストアを受ける際には見ることができるかもしれません。

ということで、2回にわたり井笠客車から発見された“お宝”についてお伝えしてきました。
いづれもレストア作業の過程で“発見”された“お宝”ですが、どの“お宝”もこの車両が経てきた歴史を雄弁に物語るものばかりです。そしてもちろんこの車両自体も、その構造や細工、補修履歴などすべて歴史的な背景があるひとつの“お宝”でもあります。わたしたちが取り組んでいるレストア作業も、必然的にこの車両が過ごして来た年月と向き合う作業でもあります。この車両が経てきた100年近い歴史を紐解きながら、この車両の“これから”を形作っていくことになります。
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歴史を紐解きながらのレストア作業が進められる

タグ:井笠客車

井笠客車から“お宝”! 前編 [トピックス]

元井笠鉄道の軽便木造客車が6月にまきば線にやってきて2か月が経過しました。その間、調査も兼ねた修復作業が進められてきました。
その作業の中でいくつかの意外な“お宝”が発見されました。

まず最初の“お宝”、テーブルと内装の隙間から発見されたのは、“レストラン ポッポ”のメニュー!
この木造客車は、1984年(昭和59年)5月に西武山口線改築により廃車になった後、1988年(昭和63年)7月から西武園ゆうえんち内の“レストランポッポ”として使用されていました。永らく遊園地の代表的なレストランとして親しまれていましたが、2010年(平成22年)3月にレストランは閉店となりました。その“レストラン ポッポ”のメニューがこの客車の内装の隙間から出てきたのです。
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メニュー表紙。木造客車のサイドビューが広がる

メニュー自体はコートされた厚手のボール紙製で、二つ折りになっています。
メニュー表紙はまさにこの木造客車のサイドビューで、“木造客車内でお食事”ということが、大きなセールスポイントだったことがよくわかる表紙です。
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メニュー裏側。提供されていた料理・飲物が並ぶ

そしてメニューの裏面には提供された料理・飲物が並んでいます。
主なものとしては、
 オードブル
   若鶏の唐揚げ………………………………¥600
   ソーセージの盛り合せ………………………¥600
   チーズの盛り合せ……………………………¥600
 お料理
   ポッポセット…………………………………¥1,800
   海老フライセット……………………………¥1,500
   豚ロース生姜焼きセット……………………¥1,500
   テリヤキチキンセット………………………¥1,500
   ハンバーグステーキセット…………………¥1,500
   ミニバーガーフルーツカクテル添え…………¥800
 パスタ・カレー
   和風スパゲッティー サラダ添え…………¥1,000
   スパゲッティーミートソース サラダ添え…¥1,000
   若鶏のカレー サラダ添え………………¥1,000
   小海老のカレー サラダ添え……………¥1,000
   お子様ポッポランチ………………………¥1,000

この他にスープやサラダ、飲物としてはコーヒー・紅茶、ジュースなどのソフトドリンクに加え、生ビール、ウイスキーまで用意されていました。
海老フライやハンバーグ、スパゲッティーにカレーと、遊園地内のレストランのにぎやかな食卓を彷彿とさせるメニューです。きっとたくさんの家族連れがこの客車の中で楽しいひと時を過ごしたことでしょう。

さらに、メニューと一緒に発見されたものが“うちわ”です。
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メニューと一緒に発見された“うちわ”

このうちわ、“西武園ゆうえんち 七夕まつり”というロゴと共に、七夕飾りと夜空に輝く花火が切り絵風に描かれています。西武園ゆうえんちの花火は夏の風物詩ともなっているものですが、おそらくレストランポッポ時代には、お客さんたちはこのうちわで扇ぎながら軽便客車の窓越しに花火観賞していたと思われます。
その花火を楽しむテーブルから、何かの拍子にメニューとうちわが落っこちて、たまたま内装の隙間にはさまってしまったのでしょう。そのまま気が付かれることなく時を超え、現在のまきば線によみがえってきたと思われます。
すでに鉄道車両としての役割を終えていたころの“お宝”ですが、この車両の歴史を物語る貴重な資料ですので、大切に保管していくこととなりました。

木造客車から見つかった“お宝”はこれだけではありません。
次回へ続きます。
タグ:井笠客車

「本物のSLで自由研究」が開催されました [トピックス]

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イベントに向け、準備&リハーサルする羅須地人たち

8月7日(日)、夏らしい青空の下、成田ゆめ牧場のイベント「本物のSLで自由研究」が開催されました。
このイベントは、毎年夏休みのこの時期に、子供たちに実際に蒸気機関車を見て触ってもらい、夏休みの自由研究に役立ててもらおうという企画です。成田ゆめ牧場さんの主催で、羅須地人鉄道協会が全面的にご協力させていただき開催しています。
今年もこのイベントに参加すべく、十数名のお子さんたちとその保護者の方々が真夏の太陽が照りつけるまきば線機関庫に集まりました。

まず最初は、機関庫内の特設教室での座学講習から始まります。特設教室と言ってもフラットカー1502の上に長椅子を並べただけですが(笑) まずは蒸気機関の原理について簡単に説明が始まります。今回よりあらたに「ヘロン蒸気機関」の模型が登場! できあがった“蒸気機関”は製作者のスキルの都合上、ちょっと変わった形になりましたが、子供たちの目の前で蒸気の力を見せつけることに成功しました。
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約2000年前に作られた“ヘロン蒸気機関”

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…を実演するべく製作された“塗料缶蒸気機関”

もちろん、今回もぶにゃん氏が作成した蒸気機関の弁装置模型も大活躍、もしも“弁装置”がなかりせば、ということで、わざわざ交互に風船を膨らませる実演込みで子供たちの興味を引いていました。
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“風船メン”が登場しピストンの仕組みと弁装置を実演!

模型や資料などを使った原理の説明の後は、いよいよ蒸気機関車の登場です。“手旗信号マン”の誘導により、子供たちの目の前に6号機が入線してきます。資料で見たボイラーや煙突、汽笛、安全弁(!)など、実物を間近で見ながら説明が行われます。
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“手旗信号マン”の誘導でお待ちかねの蒸気機関車が登場

蒸気機関車の構造を理解してもらったあとは、いよいよ機関庫を出ての実演となります。子供たちが見守る中、機関庫前のターンテーブルを使って6号機を方向転換させます。小さいとはいえ蒸気機関車が目の前で回る姿に大人も子供も興味津々です。
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目の前でぐるりと方向転換

方向転換した6号機はそのまま転線して、またもや参加者の皆さんの目の前で客車と連結です。ピンリンク連結器で連結の後、エアブレーキ配管の接続までじっくりと見てもらいます。
そして、そのまま機関庫の前にある“ふしぎなプラットホーム”から特別列車に乗車、真夏のまきば線を2周ほど体験乗車してもらってすべての課程は終了となりました。
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ひまわり咲くまきばを往く蒸気機関車の“特別列車”

イベント終了後は、ほとんどの参加者の皆さんは記念撮影タイムに突入、普段は立ち入れないヤード付近で、汽笛の吹鳴体験や6号機運転席(むちゃくちゃ暑いですが)での記念撮影などが行われました。
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イベント終了後は記念撮影タイム!

今回のイベントは主にお子さん向けということで、下は幼稚園児、上は小学生高学年という幅広い年齢層のお子さんたちが参加しただけに実演や説明の内容にも気を使いましたが、どのお子さんたちも楽しんでいただいたようです。また、表情を拝見していると、保護者の方々も目の輝きがお子さんと一緒だったりして、童心に帰って楽しんでいただいたようです。
真夏の暑い盛りのイベントでしたが、その暑さに負けず劣らず今年も盛り上がったイベントとなりました。
年に一度のイベントですので、今年はもう終了しましたが、ゆめ牧場のご担当者によると、来年も実施したいとのことです。“本物のSLで自由研究”をしたいお子さん(&おとうさん・おかあさん)は来年をご期待ください!

今年も「本物のSLで自由研究」が開催されます [トピックス]

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昨年の「SLで自由研究」の様子

8月の夏休みシーズンに毎年1回開催される成田ゆめ牧場さんのイベント「本物のSLで自由研究」が、今年も8月7日(日)に開催されます。
このイベントは、「夏休みを親子一緒にできる企画を」ということで、成田ゆめ牧場さんのほうで企画・運営、当会が全面協力して、毎年開催されているものです。毎回多くのご家族連れにご参加いただき、まきば線機関庫でわたしたち羅須地人メンバーの「蒸気機関車教室」を聴いていただいたり、実際の蒸気機関車に乗ってもらったりしています。なかにはお子さんよりお父さんのほうが熱心なご家族もいらっしゃったりしますが、それでも本物の蒸気機関車を見て触れて、汽笛を鳴らしたり石炭をくべたりと、お子さんにも大人気のイベントです。もちろんイベントの最後には蒸気機関車でまきば線を1周出来ます。
今年は8月7日(日)の10時からと11時からの二部制になっていて、参加費は1組500円となっていますが、親子2人でまきば線にご乗車いただいても800円ですので、大特価です!
ご参加のお申し込みは成田ゆめ牧場さんまで直接お願いします。詳細はこちらをご覧ください。

夏休みの1日、鉄道好きのお子さんのために、もしくはわが子を鉄道好きに育てたいお父さんのために、まきば線でひと時を過ごしてみてはいかがでしょう。たくさんの皆さんのご参加をお待ちしてます!
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真夏のまきば線を走る特別列車(昨年の様子)

2輌の木造客車 [トピックス]

今回まきば線にやってきた2輌の木造客車ですが、もともとは西武鉄道31と33、さらにさかのぼると、井笠鉄道ホハ2とホハ5でした。井笠鉄道(大正2年当時は井原笠岡軽便鉄道)の開業にあたり用意された6輌のボギー客車のうちの2輌として、大正2年11月に日本車両製造株式会社にて竣工しました。
同じ年に同じ会社で、同じ図面から作られ、ともに井笠鉄道に納品され、同鉄道の廃止をともに迎えています。その後の西武鉄道へ移籍、レストランへの改造という変遷も一緒だったのですが、当初からそうだったのか、それとも改造の末にそうなったのかはわかりませんが、98年後の現在では両車の所々に異なっている部分があります。
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西武ゆうえんちを旅立つ4輌
奥から西武34(井笠ホハ10)、西武32(井笠ホハ6)、
西武31(井笠ホハ2)、西武33(井笠ホハ5)
丸妻と平妻との違いがよくわかる

最も大きな相違点は、妻面(車両端部)のカーブです。上記画像をご覧いただくとよくわかるかと思いますが、ホハ2(手前から2輌目)は妻面が曲線を描いており、いわゆる“丸妻”となっていますが、ホハ5(一番手前)のほうは妻面が平面で、いわゆる“平妻”となっています。

細かい点では、ホハ2はウインドヘッダーがなく、ウインドシルが段付きになっています。また、雨どいがデッキの車室側にあります。西武山口線では「31」を名乗っていましたが、レストランポッポになった時に再塗装の上、「32」を表記されてしまいました。おそらく機関車から2輌目に設置されていたからかと思われます。また、おなじ西武園にいた4輌の中でルーフの“もっこり”具合が一番深いのもこの車両でした。
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西武ゆうえんち搬出前のホハ2

一方、ホハ5は、ウインドヘッダーが付き、ウインドシルは平板です。また、雨どいはデッキの車端側です。西武山口線では「33」を名乗っていましたが、同じくレストランポッポになった時に最後尾に配置されたせいか、「34」と表記されてしまっています。
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同じく西武ゆうえんち搬出前のホハ5

また、室内は、両車ともレストランとして使用された時に改造されており、ロングシートの座面や網棚が取り外され、テーブルや照明・空調・音響装置が設置されたり、窓が固定されたりしています。まきば線にもそのままの状態でやってきています。
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内装はレストラン時代のまま

全体的な保存状態を見てみると、主な材質は木材ですから、残念ながら塗装がはがれてしまったり、腐ってしまったり、また欠落してしまった部分もあります。
しかし、鉄道車両としての現役を退いて26年以上、しかも露天で保管されていたことを考えれば、2輌とも保存状態は驚くほど良いと言えます。西武鉄道様、そして西武ゆうえんち様が、貴重な車両であることを認識して大切に保管・管理いただいたのかがよくわかります。

今後、まきば線での復活に向けて調査を進めていくことになりますが、調査が進むにつれて、さらにいろいろなことがわかってくるかと思われます。それはまた、それぞれの車両が歩んできた歴史を紐解くことにもなろうかと思います。
98年間の歴史とじっくりと向き合う作業が始まります。
タグ:井笠客車

木造客車がやって来た! おまけ [トピックス]

さて、今回西武ゆうえんちからやってきたのは、2輌の木造客車だけではありませんでした。
西武ゆうえんちで、コッペルや木造客車が保存されていたたレストランポッポのさらに奥、レールが途切れるあたりにひっそりと腕木式信号機が立っていました。
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植え込みの中にひっそりと立つ腕木式信号機

信号機には電源ケーブルも来ており、おそらく点灯することもできたのでしょう。そしてそのさらに奥、つつじの植え込みの中には連動テコも眠っていました。しかも、連動して動くように信号機とテコはワイヤーで連結されていました。
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良く見るとつつじの中には連動テコ

新交通システムになる以前の西武山口線では、腕木式信号機やタブレットが使用されていました。おそらく新交通システムに改築される際に、何か記念になるモニュメントを、という思いを持った方が西武鉄道にいらっしゃって、ここに移設・保存されたのだと思います。
しかし、客車搬出の下見の際に、西武ゆうえんちを訪問した際、設備のご担当者にもお聞きしたのですが、残念ながら設置から二十数年を経て、どういう経緯でこの信号機がここに立っているかをご存じの方はいらっしゃらないとのことでした。そしてこの信号機の今後の処遇を確認したところ、車両搬出後にすべて取り壊すとのことでした。

西武山口線改築後26年を経て、西武ゆうえんちにもすでに経緯ご存じのかたはいらっしゃらない、しかし、ここに確かに残っていた腕木式信号機。連動テコとも結ばれ、しかも点灯できるように、と本物になるべく近い形で残された腕木式信号機。…その背景を想像すると、ここでわれわれが放っておくわけにはいかないじゃないですか!
早速、西武ゆうえんち様に内諾をいただいた上で、西武鉄道様にコンタクトしたところ、快く譲渡承諾をいただくことが出来ました。

そして車両搬出日の6月14日、西武運輸様・奥井組様のほかに当会の手配したトラックが1台、腕木式信号機に横付けされました。車両搬出と同時に信号機の搬出作業が行われ、無事、腕木式信号機と連動テコも、西武ゆうえんちを後にしたのでした。
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横付けされたトラックに積み込まれる腕木式信号機

その後、この腕木式信号機と連動テコは車両搬入と同じく6月16日にまきば線に運び込まれ、とりあえずの仮安置場所に置かれました。どこのどなたかはもうわからないかもしれませんが、西武山口線の思い出に腕木式信号機を残そうとされた方の気持ちは、確かにわたしたちが受け継いでいきたいと思います。
さぁ、この信号機、どこに立てましょうか!
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まきば線に運び込まれた腕木式信号機


さて、5回+1にわたって元西武鉄道・井笠鉄道の木造客車搬入についてお知らせしてまいりました。まだまたお伝えしたいことはたくさんあるのですが、きりがないのでこの辺にさせていただきます。もっとお話を聞きたい方は、ぜひ活動日にまきば線機関庫に遊びにおいでください。

そして、最期に、この車両移籍・搬入でお世話になった方々への御礼をもちまして今回の記事を締めさせていただきます。
まずは、元所有者でありまた快く譲渡に応じていただいた西武鉄道様、これまで大切に保管いただき、また搬出事前準備等でも大変ご配慮いただいた西武ゆうえんち様、約100年前の木造客車の陸送というほとんど前例のない輸送にあたって、最大限のご配慮と技術力で応えていただいた西武運輸様と奥井組様、そしてコーディネーターとして大車輪の活躍をいただいたせんろ商会/けいてつ協会様、いつも我々を温かく見守っていただき、今回のまきば線へ搬入にあたってもご理解をいただいた成田ゆめ牧場様、そして今回の車両搬入にご協力いただいたすべての方々に感謝を申し上げ、搬入完了の報告とさせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。
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無事搬入作業も完了し、記念撮影 「ばんざ~い!」

木造客車がやって来た! その5 [トピックス]

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1輌目が降りたところで続いて2輌目が運び込まれる

1輌目が線路の上に降りて無事に車両庫に納まると、続いて2輌目です。もう手順はわかりましたので、ドンドン行きます。
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空中を行く2輌目

1輌目と同じ場所・同じ年・同じ設計図で造られたはずなのですが、こちらはなぜか台車と車体の間隔が広くなっています。おかげで車体をジャッキアップすることなく、車体と台車の間にH鋼が入ります。車両庫の中から1輌目が見守る中、同様に吊りあげられ、無事に仮台車の上に載せられます。
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ほどなく2輌目も無事レールの上に

車両庫に入ることは確認済みですので、今度の車両は5号機で車両庫に押し込まれます。2’6”の軽便鉄道車両と2’のトロッコ用機関車、片方は仮台車の上に載っているとはいえ、大きさの対比がスゴいです。
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5号機に押されて入庫する2輌目。実は5号機のほうが軽い!

このあとトラックの上に残された2輌目のアーチバー台車も降ろされて、2輌の木造客車の搬入作業は予定通り無事完了しました。朝8時過ぎから始まった吊り上げ作業は、午前10時前にはすべて終わり、まきば線には元の静けさが戻ってきました。
すべてが終わった車両庫では、頸城鉄道からやってきたラッセル車ラキ1が、隣の線路から“新入り”を出迎えていました。
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頸城のラキ1が井笠ホハを出迎える

まだつづきます。
タグ:井笠客車

木造客車がやって来た! その4 [トピックス]

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案外すんなりレールに載った1輌目

さて、とりあえずゲージ(軌間)違いについては仮台車という手段でなんとかしました。しかし実はもう一つ解決しなければならない課題がありました。“高さ”です。
まきば線には車両庫がありますので、この客車もせっかくですからこの車両庫の中に保管したいところです。その車両庫は、まきば線で一番背の高い車両であるラッセル車が入線可能なように作られており、その高さは2.9m。一方、今回の客車は竣工図面でレール面から2.9m!、ぎりぎりなんとかなるか!と思われますが、今回仮台車を履くことになりますので、さらに高くなります。

そこで、事前に車両庫のほうを加工することとなりました。受け入れが決まった後、木造客車が入線する部分の車両庫妻板をカットします。
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事前にカットされた車両庫妻板

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裏から見るとこんな感じ

正規の車両寸法から台車高さを引いて、仮台車高さを足して、代表幹事T氏が割り出した高さは3.35m。早速、車両庫の中線部分の妻板がカットされ、搬入を待ちました。

そしていよいよ、搬入日。事前準備のおかげか、けっこう順調に、最初の1輌目が仮台車の上に載りました。はてさて、車両庫に入線できそうかな?
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車両庫内から見てみると…

車両庫内から見てみると、何とかなりそうですがぎりぎりのようです。仮台車に載った木造客車は無事に車両庫に入ることができたでしょうか?







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絶妙なクリアランスで車両庫に入る客車

もしも引っかかってもいいように、人力でゆっくりと車両庫に入線します。T氏の計算は正しかったようで、どこにも当たらずに絶妙なクリアランスを保って車両庫に滑り込んでいきます。 
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久しぶりに“おうち”の中に入る木造客車

続きます
タグ:井笠客車

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